退居時のことは考える

入居したばかりの状態で、「退居」するときのことなどは考えたくないものです。ですが、「一生そこで暮らす」という意識もないのではありませんか。いつかはまた引っ越すのです。

賃貸物件に馴れた人であれば、「退居時」に向けて必要なことをわかっているものです。退居する際、「借りていた」部屋を返還する際、何が大切なのかということがわかっているものです。それはなによりも「借りた時のようにキレイであること」です。そして破損が最小限度に抑えられていることです。

生活していれば、部屋は汚れるものです。それは私が文化的であり、活動的である以上、仕方のないことなのです。生活していて全然汚れないことはあり得ません。あらゆる行動が、仕草のひとつひとつが、誇りや汚れ、そして「痛み」を生じさせるのです。それらは日々の掃除やメンテナンスで少しずつ解消していくものです。この「日々の掃除やメンテナンス」が、退居の際の「費用」を左右します。物件の契約のカタチにも依るのですが、入居時に支払っている「敷金」は、退居の際の原状回復費用に充てられるのが通例です。原状回復とは、入居時の姿にその物件を戻すということです。これは容易なことではなく、生活していれば当然汚れるし痛むわけですが、そのような部分も含めて考えられる場合が多いのです

人によってはタバコを吸う方などもいることでしょう。その際、壁や天井に付着する「ヤニ」も、次の入居者のためにキレイにする必要があるのです。それらはクリーニング業者が行うことで、費用が発生します。その分の費用を、敷金から充てるのです。入居時には「敷金は還るものですよ」と言われていたとしても、これらのクリーニング費用でほとんど戻っては来ないのが一般的です。もしくは、破損が著しい場合などは原状回復費用が敷金では足りず、プラスオンされて請求される場合すらあります。

これが「借りている」ということの宿命で、「いつかは返す」ということです。賃貸物件を借り馴れている人であれば、この「いつかは」を視野に入れて、丁寧に物件を扱うもので、最低限度の原状回復費用で住むのです。日々の家賃は日々そこで生活するための「家賃」であり、退去時の修復費用のために積み立てているわけではないということです。物件の痛みは住んでいる期間が長ければ長いほど著しいものになるでしょう。子どもがいる世帯などでは、設備が破損してしまうこともあるかもしれません。ですが、それも生活している以上は仕方のないことだと考える他ないのです。

契約時に退去時のことは定めてあるはずなので、その契約をしっかりと確認するようにしましょう。それは暮らしている間にだんだん忘れていってしまうものかもしれませんが、いつかは出て行くのですから大切なことでもあるのです。次の入居の際には、この「退去」する際のことを想定するだけで、掃除をマメに行えたり、物件を丁寧に扱うようになったりするものです。それらを少しずつ実践するだけで、契約によっては敷金が還ってくるのです。それら変換された敷金を、次の物件の敷金に充てるなどが可能になるのではないでしょうか。また、「借りている」という意識を持つことは、生活のさまざまなシーンにおいても「大切にする」ということに繋がるのです。