そこで生活できるかどうかを考える

賃貸物件を借りるということは、ある程度の期間「そこで暮らす」ということです。それは言葉の額面以上の意味を持ちます。帰るべき場所、落ち着く場所。まさに「自分のホーム」なのです。

そのようなことを考えると、なんだか部屋を契約するのが少し不安になってしまうかもしれません。ですが、これはごくシンプルなことです。「自分がそれでいいかどうか」ということです。ただ営業に薦められるまま契約して、それでいいのかどうかを考えるということです。本当はどんな部屋に住みたかったのか、本当はどんな部屋でどんな生活をしたかったのか、それを改めて考える必要があるということです。どのようなしがらみもなく、純粋に考えてみれば、おのずとそれはわかるのではないでしょうか。また、それは自分自身しか知らないこと、わからないことでもあります。誰にも相談できない、相談する意味もないことだということです。

「暮らす」ということは、生きている限り起こることです。生きている限り、そこで生活する必要があるのです。生活は、単純なものではありません。どのような仕事をしているのか、職場までどれくらいの距離があるのかによっても変わります。ただ生きていればいいというわけにはいかないのが私たちです。「文化的な暮らし」を保証されているということもあります。私たちは最低限文化的で健康的な暮らしを保証されているのです。そのための原点、あらゆる「暮らし」の大前提が、「住まい」なのです。

賃貸物件を検討する際に必要なことは、「そこでの自分の暮らしがイメージできるか」ということです。ただ条件に惑わされ、「予算が少ないから仕方がないか」などと妥協すると、痛い目に合うことになるでしょう。どのような予算であっても、「これは厳しい」というような物件であれば、契約すべきではないのです。「住む」ということは、他に逃げ場がなくなるようなものです。なにかその住まいに致命的な欠陥、それは自分が暮らす上での欠陥があれば、それは当分我慢しなければいけなくなるのです。そうそう何度も引っ越しを繰り返すわけにはいきません。仮に予算に余裕があったとしても、それは完全な「無駄」というものです。

そのようなことにならないためにも、自分自身が「そこで暮らしているイメージ」をしっかりと描きたいものです。それは些細なことからでいいのです。毎朝の通勤、通学の時間を計算してみたり、自分がいつも買う日用品はどこで買えばいいのか考えてみたり、そのようなことからでいいのです。それらを漠然とでも思い浮かべてみると、ある瞬間に「何かが足りない」と気がつくことがあるかもしれません。逆に、「理想通り」だと再確認できるかもしれません。どちらにしても、あらゆるシーン、あらゆる角度で確認することが大切です。パッと見のキレイさ、パッと見の利便性などでごまかされたり、舞い上がってしまうものかもしれません。ですが、それらは実際に暮らし始めるとすぐに「慣れる」のです。

誰もがキレイな物件、新しい物件を好むでしょう。ですが、本当の便利さはそのようなうわべだけでは計れないのです。実際に暮らしてみてどうなのか、どのような時間サイクルで生活をするのか、こんなとき、あんなとき、この部屋で何をやっているんだろうということを、イメージしてみてください。