実は「家賃」は一定ではないということ

同じ建物で、同じ条件を備えた部屋でも、実は家賃が違うことがあります。私たちは最初に定められた家賃をずっと払い続けるわけですが、その「最初」のタイミングによっては家賃が大きく違うことがあるのです。

「どこどこの物件は高い」であるとか、「駅から近いからこの家賃は仕方がない」というのは私たちがある程度条件に対して「相場感」を持っているからです。その相場感はある意味では正しくて、「一般的」にはその通りなのですが、そのような私たちの「相場感」を覆すような物件も存在しています。しかも、特に何か問題があるから安いというわけではなかったりするから不思議なものです。

「問題」というのは、例えば「その物件で自殺があった」とか、「墓地が近い」、「鉄道の路線が近くでうるさい」などという明らかにネガティブな要素です。誰もが忌避したいと考えるような要素があれば、その物件はとてつもなく安く提供されていることがあります。それを「気にしない」という人でなければ、そこに「住みたい」とは思わないような条件です。ただ、そのような要素が何一つないのに、なぜか「安い」ということがあります。それは「その物件をとりあえず満室にしたい」という希望がある場合などです。

賃貸物件には「オーナー」がいるものです。オーナーの意向は、募集から物件の管理に至るまで反映されるものです。それは「この物件は学生専用にする」という希望であるとか、「この物件はファミリー専用にする」というような条件付まで、多岐に渡ります。オーナーから委託されてその物件の募集から管理を担当する不動産業者は、その意向に従わざるを得ないのです。家賃収入というものはある意味で安定しないものです。人はそう度々引っ越すものではなかったりするもので、「春に転居することが多い」というのは世の中のアベレージです。そのような時期以外は、なかなかあたらしい入居者がいなかったりするのです。

ですが、部屋を満室にしたいという場合、もっとも効果のある「要素」を変更することで入居者を集められるかもしれません。その要素とは、「賃料」です。春などの引っ越しシーズンから外れる時期に賃料を下げ、募集することで一気に部屋を埋めることができるかもしれません。家賃は部屋探しの大前提であり、どのような条件にも勝る「ウリ」なのです。ですから、そのような引っ越しのオフシーズンに物件探しを行うことで、もしかすると繁忙期よりも安く契約できるかもしれません。

安く契約した部屋は、一時的に安いのではありません。ずっとその家賃です。つまり、同じような物件、同じ建物の部屋なのに、「家賃が違う」ということが起こり得るのです。隣の住人に「家賃いくらですか」などという質問はしないものです。だから気が付けないのですが、実際に全く同じ条件で家賃が違うというケースは多いのです。家賃とは言い値です。オーナーがそう決めればそうなのです。家賃があと五千円安ければ借りたかった、という場合は、交渉次第で希望が叶うかもしれません。

階数が高ければ家賃が高い、新しい物件であれば家賃が高い、駅に近ければ家賃が高いなどということは、すべて私たちの「イメージ」です。実際はオーナー次第であり、時期や状況で変わっていたのです。